事前の節税・事後の脱税

一般に、弁護士さんや司法書士さんへ法律相談をする場合、どのタイミングで行うことが多いでしょうか。おおよそ、ことが起こって問題が生じてから相談されることが多いのではないでしょうか。もちろん、問題が生じないように契約書について相談するなど事前対策で相談される堅実な方もいらっしゃるでしょう。

税理士においても同じで、どちらかというと、行動を起こしてから相談されるケースも多くあります(ただ、最近は事前に相談される方も増えてきました)。行動を起こしてから相談された場合、問題が生じることがあります。

行動を起こした=事実というのは変えられないのでそれに即した税金の法律適用でしかできません。もっとこうしておけば、税金を安くできたとか有利になったとか言っても後の祭りになってしまいます。もちろん、事実に対する法解釈について、複数の法解釈が生じる場合、主張によっては、有利になったり不利になったりということは出てきます。しかしながら、通常は事実に即した法律適用しかできず、ペーパー上や事後対策での節税は皆無に等しいのです。事実をねじまげて、こういうことにしておこう、というのは脱税で脱法行為ですから決して行ってはいけません。

例えば、今年の税制では、不動産を売ると税率が○%だけど、来年の税制改正では、○%で税率が少し下がるので来年売ることにしようとか、法人経営で今年は利益が思った以上に出たので決算対策で、決算賞与を出そうとか、保険に加入しようかと、事前に対策を打つことは、節税ですが、これが、後になって税金が多くかかることを知り、この日に売ったことにしようとか、賞与を払ったことにしようとか保険に入ったことにしようとなどとすると脱税となってしまします。

法律や税金のしくみを調べるときには、そのタイミングに注意し、必ず事前対策をするように心がけたものです。

よくある質問~不動産の売却~

最近、亡くなった方から相続で取得した不動産を売却した場合、所得税と住民税はどのようになりますか、とよく質問を受けます。守秘義務があるので、一般的な事例から。

土地・建物を売却した場合は、まず、売却した金額から、取得費(土地の場合は買った金額。建物の場合には買った金額から一定の算式で計算した現在の価値の金額)と譲渡にかかった費用を引いて利益を出します。その利益に、所有していた期間に応じて、長く所有していれば 所得税15% 住民税5% 短い所有であれば 所得税30% 住民税9%の税率を適用した金額が納税額となります。

申告するにあたって、売却した金額や、買った金額、時期(所有期間によって税率がかわるため)、譲渡にかかった費用の資料が必要なわけですが、ここで、相続でもらった場合、買った金額や時期は、どうなるかということですが、実は、この場合、亡くなった被相続人が買った金額と時期を引き継ぐことになっています。これが、なかなか資料が出てこないんですね…。なんせ、亡くなった方がどこに買った時の資料を保管しているかわかりませんし、そもそも、このようなケースは、相当古くに買った場合も多くて、本当に資料があるかどうかも…。

で、買った金額がわからないとどうなりますか? となる訳ですが、この場合、売った金額の5%で買ったことになります(買った金額がわかっている場合でも使用することができます)。例えば、500万円で売った場合、その5%、25万円で買ったことになり、譲渡費用がないと仮定して、475万円もの利益が出て、長期保有していても、所得税、住民税合わせて95万円もの税金がかかってしまいます。

最近、遺言書やエンディングノートなどが注目されています。そのときには、将来、税務上、不利益を受けないためにも、このような書類関係もしっかりと整理しておく必要がありますね。

※譲渡にかかる税金は、居住用の不動産を売った場合、国や地方公共団体から収用などがあった場合、一定の不動産の買換えをした場合、相続税を支払って取得した不動産など、一定の控除や軽減の税率を使えたりする場合があるなど、適用関係が大変複雑です。不利益を被らないためにも、事前に調べたり、税務署や専門家に確認するようにしましょう。

全国統一研修会 ~二日目~

今日は、全国統一研修会の二日目に参加してきました。テーマは、平成21年税制改正と最近における税務の課題を検証するです。

☆住宅・土地税制

・住宅ローン控除の拡充(所得税から引ききれない場合は、住民税からも引いてもらえます)

・平成21年、22年に取得する土地を5年超所有して売却し、儲けがでた場合、その儲けから、1,000万円を控除できる制度が創設されました。

☆法人関係税制

・中小企業は、800万円以下の所得の部分について、22%の税率でしたが、今回の改正で18%とされました。

・中小企業において、前事業年度が、黒字で法人税を納めていて、今期が赤字の場合、前年に納めた法人税について、一定の計算により還付を受けられる制度(欠損金の繰り戻し還付といいます)が、一定法人を除き、適用停止となっていましたが、この適用停止がとかれ、適用できることになりました。

・中小企業において、交際費は、現行法においても400万円を超える部分は、税金計算の上では費用とならない(損金不算入といいます)とされていますが、これが、600万円に引き上げられました(600万円を超える部分は損金不算入、600万円以下の部分は、その交際費の10%が損金不算入となります)。

そのほかには、事業承継税制や、金融・証券税制の据え置きなどがありますが、今年の改正は小粒ですね。

※税法は、適用期間、要件等が細かいので、適用の際には、必ず税務署、税理士等に相談しましょう。興味のある項目がありましたら、声をかけてください。

全国統一研修会 ~一日目~

今日は、税理士の研修会の中でも多くの方が集まる全国統一研修会に参加してきました。今日と明日2日にわたり行い、勉強詰めです。

一日目のテーマは、「税理士業務にとって重要な最新租税判例…知らないではすまされない最近の判断傾向と税務」です(タイトルが長い…)。私自信も、税法に限らず、判例には非常に興味を持って、いつも研究しているので、今回の研修会を楽しみにしていました。

最近は、常識と思われていた取扱いについての画期的な判決が多くみられます。事例集のみではなく、法律をどのように解釈して運用していくのかを常に考えていかなければなりません。講師の先生も、裁判まで行くのは大変なこと、様々な取扱い、考え方を勉強することによって、トラブルを未然に対応できることが大切とお話をされ、全くその通りと感じました。

先生の最後のお話で大変共感したのは、実務運営に当たり法的なトラブルが生じると予想されるのであれば、あらかじめ立法論で解決するのが望ましい、そのためには、そのような法律を改正するように働きかけるのも税理士の大切な役割であるとの話です。まして、最近の法律の作り込みが、あまり良くなく、法律では解釈できず、Q&Aで補足するということが増えてる感じがします。国民、ひとりひとりが納得して払える税制を考えて提案していくことも税理士の大切な役割ですね。税金のココがおかしいという意見がありましたら、声をかけてください。