贈与税回避事件の解説 その② ~節税、脱税、租税回避~

この裁判では、争いになった額が2000億円(還付額)と巨額で、ニュースをみられている方は、悪いことをしている、脱税していると見えてしまうかも知れません。しかし、実この事件は脱税事件ではないのです。

先入観をなくすために…

1000円でも節税は合法、脱税は違法です。また、同じように2000億円の節税は合法、脱税は違法です。2000億円の税金を逃れた=悪いことをしている とイメージを持つと本質が見えなくなってしまいます。

では、節税、脱税、そして租税回避とはどのような内容なのでしょうか。

節税  法律に従っていて税金を安くする方法。これはよく知られている用語だと思います。

脱税  事実についてウソをついて申告して税金を逃れている。これについてしっかり押さえる必要があります。
  つまり、今回の事件は、贈与する前に香港に住所を移して日本の贈与税を回避しようとした事案ですが、実際に香港に住ん   でいないのに住んでいたことにしよう、というと脱税となります。前提となる事実にウソがあるからです。

  しかし、今回の事案は実際に香港に実際に66%の期間住んでいるので、全くのウソではありません。
  よって、今回の事案は脱税事件ではないということになります。

租税回避 ①、②のちょうど中間くらいに位置するのが租税回避と呼ばれるものです。あまり聞きなれない用語ですね。

  租税回避は、事実についてウソはないので合法ですし、また広い意味合いでは節税にくくられる場合もあります。   
  では、節税と租税回避はどう違うのか…

節税は法律が予定して税金を安くするための方法(たとえば、生命保険に入ってくれたら生命保険料控除で税金を安くしてあげよう、住宅をローンで買ったら税金を安くしてあげようなど)であるのに対し、

租税回避は、合法なんだけど法律が全く予定していない行動によって税金を安くされた点が異なります。今回の事案でいうと、贈与税を払いたくないから、わざわざ海外に住所を移してから国外の財産を贈与するとは、法律は思わなかったということになります。

租税回避は合法ですが通常使わない手段で税金を安くするため賛否が分かれてしまいます。

コメントをどうぞ。

TrackBack URI :