事業承継

2007年からの、団塊の世代の一斉退職が話題となって久しいですが、中小企業の社長も同年代の方が多く、事業承継が一つの問題となっています。中小企業といいましても、そこに働いている方も多くいらっしゃいますし、また、せっかくのノウハウを一世代で終わらせるのは創業社長にとっても本意ではないでしょう。

中小企業の現状はご存じの通り非常に厳しく、ほぼ、全企業の7割は赤字とまで言われています。1986年には、532万社あった中小企業も2006年には420万社まで減少しています(中小企業白書2008年度版)。この数字をみても中小企業の厳しさがわかりますが、事業縮小や廃業理由は、必ずしも業況や市況のみならず、継者がいないことによるものも多いのです(中小企業2007年度版)。

私の事務所のクライアントについても事業承継に取り組んでおられる企業があります。事業承継といいましても、すぐに経営をバトンタッチする訳には行きません。経営のこと、営業のこと、資金繰りのこと、社長の会社に対する思いを承継すること、従業員に対する対応、後継者となる方には様々な勉強をしなければなりません。このことを社長が短期間で伝えようとするのは無理なことですし、また、社長が、ずっと、一線を張り、突然、後継者に継ぐというのは、後継者にとっては大変なことです。

事業を承継するには、5年10年という長いスパンで、社長と後継者が並走して、事業を行い、共有する理念や目標を立て、社長の会社に対する想いを伝えながら、徐々に後継者に権限を譲り渡すというのが望ましいのです。

昨今の家庭環境では、家業を長男が継ぐなどという概念もなくなりつつあり、事業承継者自体を探すのも困難なケースもあり、従業員が継ぐケースやM&Aを視野に入れないとならないケースもあるでしょう。しかし、せっかく社長が育ててきた会社を一世代で終わらせたいとは思わないでしょうし、守らなければならない従業員、取引先、顧客がいますから、決して避けて通れない問題です。

事業承継は、緊急でないけど大切なことに他なりません。もし、会社の将来を考えないでおくと、この問題は必ず、緊急で大切なことに変わってしまうでしょう。しかし、事業承継は、緊急で大切なことになった瞬間に手遅れな状況になってしまいます。忙しい毎日ですが、ほんの一瞬でも、会社の将来についても考えてみましょう。

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